浦安市
ももクロと“ヘイヘイドクター”しゅんしゅんクリニックPに見る『ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?』
先日、千秋楽を迎えたももいろクローバーZさんのミュージカル『ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?』を滑り込みで観た。
ももクロが転機と節目それぞれを迎えた2018年。今演じるからこそ生み出される価値があったのと同時に、なかなか酷でもあっただろう話の筋に、本広克行監督らの彼女たちに対する鬼のような愛情に胸打たれながら会場を後にした。
夜空にオレンジ色のカボチャたちが光るモール内を群衆とともに歩き、最寄り駅に向かう私。
その脳内では、学校のテスト中とかに起きると解答に集中できなくなる「同じ曲無限ループ現象」が発生していた。今回の自動選曲は、同ミュージカルで劇中歌として何度となく歌われていたメインテーマだった。
周囲の皆様も同様だったようで、同じ曲を口ずさむ声が方々から聞こえ、それだけでなく振り付けまでループしていたファン、いわゆるモノノフさんもいた。女の子はかわいいが、おっさんは際どい。
ちなみにその駅というのが、高揚した乗降客率が日本一とみられる、千葉県浦安市にあるJR京葉線・舞浜駅。ホームは夢の国帰りの皆様と、モノノフさんたちが入り乱れ、とにかくクセがすごかった。
『ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?』の無限ループは、静岡と浜松と豊橋にも停車した最終のひかり号の車中、また名古屋に帰ってきてからも、数日間続いた。
しかし、観劇の余韻を楽しめた幸せな日々は11日未明、CBCテレビの深夜番組『本能Z』を見て、唐突に強制終了。
無限ループの自動選曲が、あの『ヘイヘイドクター』に切り替わってしまったのだ。
念のため簡単に説明すると、『ヘイヘイドクター』とは、医者であり芸人でもある、しゅんしゅんクリニックPさんが、医者姿で「医者あるある」を歌い踊る、アップテンポなネタ曲。
私はフジテレビ系列の番組『さんまのお笑い向上委員会』で、いわゆる“モニター横芸人”として披露されているのを見たことがあったが、フルコーラスで聴くのは初めてで、その圧にすっかりやられた。
しゅんしゅんさんをゲストとして迎えた『本能Z』は、今田耕司さん、東野幸治さんとフットボールアワーのお二人が全力で彼をいじるという王道パターン。その中で実践されていた、お笑い界歴戦のツワモノである4人の“いじり方”が、彼の面白さを明快に示していて、興味深かった。
一言でまとめれば、今田さん・東野さんらはしゅんしゅんさんに、“座ってのあるある披露”を許さなかったのである。
言葉にメロディーがつき、ダンスとともに歌うことで生まれるチカラ
冒頭、渾身の『ヘイヘイドクター』で、医者あるあるを見せたしゅんしゅんさん。その後は着座の状態で、持ち込んだスケッチブックをめくりながら同ネタを披露するという構想だった模様。
しかし4人のツワモノたちは、彼が大事そうに抱えていたスケッチブックだけでネタを終わらせず、いちいち改めて『ヘイヘイドクター』のメロディーとダンスにのせて披露させたのだ。全然踊りたくなさそうなしゅんしゅんさんが渋々やらされていた後者の方が、圧倒的に面白かったのは言うまでもない。
これでよく分かったのが、しゅんしゅんさんの芸を見て、私が笑っていた理由。
あるあるネタ自体の面白さもさることながら、医者が医者の格好をしてなぜか必死に踊りながら医者あるあるを歌い上げているという全体が驚きであり、魅力的だから爆笑していたのだ。
よくよく考えてみれば、彼が持っていたスケッチブックのネタを字で読んだだけで本当に笑えるのは、医療関係者に限られるだろう。それ以外の大勢にとっては笑いというよりも、どちらかと言えば「へぇーそうなんだー」という関心や納得だ。
そうした好奇心がくすぐられるネタの妙が、繊細さなどお構いなしのビートで押し寄せてくる曲の圧によって潰され気味になっているあたりに、笑いのきっかけとなる“驚きのスイッチ”があるように私は感じた。
言葉にメロディーがつき、ダンスとともに歌うことで生まれるチカラ。
そもそも自分がモノノフになって、ももクロのコンサートや映画、舞台、ミュージカルにまで足を運ぶようになったのも、肌で感じるそのチカラに魅せられたからだったなぁ…と思い返していたら、いつの間にか頭の中の自動選曲が『ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?』に戻っていた。